眼高手低逓伝広報局

元浪人生の小言大展覧会

驚きと困惑

仮面するかしないのか、全く決めきれないまま大学生となって幾日か経った。全国の予備校浪人、仮面浪人も授業や講義が概ね一通り終わった頃かと思う。

私が居るのは私立の大学であり、所謂私文である。私は文系なので、理系の学生が"妥協して"数学受験で私文に入ったなどということではないので学部学科に対して大して不満は無い。

「私文は動物園────」
「私文はチンパン────」
「講義中は居眠り、ゲーム、駄弁のオンパレード────」

このような事がまことしやかに囁かれていたので、私はまともに講義が受けられるかしらんということに不安を覚えていた。私は音に過敏な質なので、そういううるさい無秩序な空間には耐えられないだろうと考えていた。早くも憂鬱であった。

ところがどうだろう、講義を受けていてもほとんど誰も喋らない。寝ているのかと思って見ても、誰も寝ていない。教授はスムースに講義を進めている。
小教室でも、中教室でも…そして大教室でも私語がうるさすぎるということは無かった。流石に大教室はざわざわとはしていたが、講義に支障はなかった。
月曜でも、火曜でも…全部の講義でそうだった。

私は驚いた。私文はチンパンジーが半分だと思っていたからだ。確かに講義終わりには「しょうもな〜」「ねっむいわぁ」などという声もチラホラ聞こえるが、講義中は大人しくしている。

私は困惑した。私文はチンパンという前提に基づいて仮面を計画していたからだ。動物園の脱出を思い描いていたが、そこには(私が思う)普通の講義風景があった。こうなると仮面する意義が、プライドと学歴への拘りぐらいしか見いだせなくなってしまう。京大に在学する先輩にも

「(仮面は)やめといた方がいいよ。(君は地元就職志望らしいし)そこまでする価値は京大にはない。大体君の成績じゃ前期後期休学して勉強しないと受かりそうにないし。(それでも受かる確率は低い)」

と言われたので、本気で仮面を取りやめようか悩んでいる。


さて、東京の大学に進んだやつの声を聞いてみると、公立私立問わずに講義がうるさいらしい。もしかすると、関東のやつは騒ぎたがりなのかもしれない。私は関東人を「騒ぐやつはべらぼうに騒ぐし、大人しいやつは例え殴られてもおとなしいという二極化が激しい奴ら」と思っているので、そういうことなのかもしれない。東京私学を一つも受験すらしないで正解だった。
しかし、同学の別学部のやつの話を聞けば、そいつの所の大教室の講義はうるさいらしい。もしかすると、私は学部に恵まれたか、履修の選択で恵まれたのかもしれない。

何れにせよ、喜ばしくも私は悩むこととなった。